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2026.01.09 ITニュース モノづくりのDX ~CAEとAIと人材育成~

モノづくりのDX

 デジタルトランスフォーメーション(以下、DX)については、平成30年(2018年)に経済産業省から「DXレポート」が提唱されて8年近く経ち、周知徹底とまではいかないものの、IT業界においては浸透してきたものと感じられる。

 ここで、DXの定義について顧みてみよう。本稿執筆時点においてWikipediaでは、

「デジタルテクノロジーを使用して、ビジネスプロセス・文化・顧客体験を新たに創造(あるいは既存のそれを改良)して、変わり続けるビジネスや市場の要求を満たすプロセス」

と記載されている。ここで、読者諸氏には「DXはプロセスである」ということを認識していただきたい。経済産業省の定義においても「~変革し、競争上の優位性を確立すること。」とある。つまり、DXの成功とは「競争上の優位性が確立できたこと」、すなわち経営観点では「市場での地位を確立」できた企業を指すものと考えられる。

 では、本コラムのタイトルにした「モノづくりのDX」とは何を表わすものだろうか。

世間一般には多種多様な捉え方があると思われるが、敢えて以下の2種類に大別する。

1. デジタル活用された『モノ』を「つくる」ことによる市場での地位確立

2. 「モノ」をデジタル活用して『つくる』ことによる市場での地位確立

 前者は所謂、スマホ、ウェアラブルデバイスやIoTなど、QRコードや電子マネーを活用して既存の手法を一新し、顧客体験価値(CX)やユーザーエクスペリエンス(UX)を向上させることで製品価値を高め、一定の市場のニーズを満たすことによって地位を確立している。

 その一方で、後者は製品そのものの新規価値付与を手段とするものではなく、既存の製品を効率よく生産することによって、市場での製品価値向上を図るものである。ここで用いた「効率よく生産」という言葉は、必ずしも製造現場のみを指すものではなく、その製品の「企画」「市場調査(マーケティング)」「設計」「研究・開発」「試作」「評価・テスト」「検証」「製造」「サプライチェーン」「物流」など、『モノづくり』に関わるありとあらゆる業務が効率向上の対象であるということを認識していただきたい。

 モノ『づくり』がDXされることによって得られる恩恵は多い。

 所謂、ヒト・モノ・カネが大きく削減できるということは、よほど高額な投資をしない限り達成出来そうであるということは読者諸氏の想像に難くないだろう。

 弊社が主要事業として取り組んでいる「CAE解析コンサルティング」の「CAE」とはまさにデジタル化によってモノづくりのヒト・モノ・カネを削減することを目的とした手法を指している。そもそも「CAE」とは「Computer Aided Engineering」の略で、直訳すると「工学(エンジニアリング)の計算機(コンピュータ)による支援」。つまりはモノづくりをコンピュータ活用によって効率向上させる手法そのものを指している。狭義ではシミュレーション解析ソフトを用いて試作なしで製品性能を検証する手法を指すことが多い。

CAEという言葉はDXという言葉が産まれるよりも早く、1970年代頃から提唱されている。所謂、コンピューターの性能が上がったことにより隆盛を極め、直近では1,000億円規模の国内市場を形成している。

CAEとAI

 2020年代に入り、CAEに代わるゲームチェンジャーと成り得る存在として台頭し始めたのがAIである。このAI(人工知能)という言葉も様々な意味を包含しているが、ここでは『生成AI』をイメージしていただきたい。

 『生成AI』についてその定義を述べると、「訓練データの規則性や構造を訓練において学習することで、訓練データに含まれない新しいデータを生成することができる」AIである。今までのAIと呼ばれていたものは既存のデータからしか答えが出せない為、業務における用途も限定されていた。膨大なテスト結果やシミュレーション結果から最適解を求める「最適化ツール」と呼ばれるソフト等を用いて活用させる程度であった。

 ここで、CAEと生成AIの差異について述べると、

 CAE:予め設定した条件やモデルを元に、物理式を解くことによって答えを得る

 生成AI:学習に用いた訓練データに基づいて答えを生成する

CAEはより現実に近い答えを得られるように受け止められるかもしれないが、「予め設定した条件やモデル」や「物理式」が必ずしも正しい(現実と完全に一致する)わけではないということに留意すると、その答えが怪しいということもわかるであろう。「ラプラスの悪魔」が肯定されない事実からも「完璧な解析」というものは存在しない。要するに、CAEの結果とは「現実と近くなるように理論的に算出された結果」なわけである。

 一方で、生成AIから求められる結果は訓練データに基づいた推測であるため、訓練データの精度が高ければハルシネーションといったリスクはあるものの概ね現実離れした値にはならない。また、CAEで必要だった「予め設定した条件やモデルを元に、物理式を解く」というプロセスが存在しないため、高度な専門知識がなくとも、解析を実施して「解」が得られるようになった。まさに生成AIが示す画期的な世界である。

 

 改めて「CAE」と生成AIを含む「AI」全般の特徴について整理すると、

CAE

CAEはコンピュータを用いて物理法則(数式)に基づいて理論的な解を得る

〇条件設定やモデルが正しければ、論理的に正しい解が得られる

✖条件やモデルが不正確であれば解は現実と乖離する

✖ハイスペックなコンピュータへの投資や計算時間など、コストが増大する

AI

AIは学習データに基づき瞬時に答えを推測する

〇物理計算のプロセスが省略されるため計算コスト(時間)が非常に少ない

〇解を出すために特別なスキルやプロセスが不要

✖学習データの質が悪ければ誤った回答(ハルシネーション)となるリスク

これらは相反するものではなく、補完関係にあると言える。例えば、CAEで時間をかけて生成した高精度なデータをAIに学習させることで、「CAEの理論的な正しさ」と「AIの圧倒的な計算スピード」が両立可能となる。

 非常に素晴らしい話に聞こえるかもしれないが、そこには大きな落とし穴が存在し、技術の恩恵を享受する上では必ず気を付けないとならない事柄がある。
 AIを使えば、専門知識がない人にも簡単にプロンプト(指示)一つで「それらしい解」が得られるようになる。「その答え」は正しいのか?

 その答え(結果、解)の妥当性(精度)判断に専門的な知識とスキルが求められる
コンピュータを使うにせよ、AIを用いるにせよ、<検討を指示>し、 <結果を判断>するのが「人」の役割であることは変えられない。

 技術的革新によって「解を出す作業」が誰にでもできるようになる一方で、「解を評価する責任」は重くなる。「解」を活用したアウトプットに対してはエンジニアの責任が問われることとなり、「答えが正しいかどうか」の判断には、これまで以上に高度な専門知識と洞察力が求められる

 「技術」とは「人類誕生」と同時に発生し、まさに「人」と「技術」は切っても切れない関係にある。よって、「技術」の進化に追い付くよう「人(エンジニア)」を訓練、教育する必要がある。「技術」と「人材育成」は共進化の関係にあることを心に留めてほしい。

DX時代の人材育成の価値

 しかし、現時点において必要な人材育成は従来のそれと大きく異なっている。「指示された内容を実行する」という仕事がコンピュータ及び生成AIが対応できるようになったことから、従来の新人一斉研修やOJTなど、タスクがこなせるようになるための人材育成の価値が下がり、よりクリエイティブな人材が求められることとなる。

 そういった中においては、今の人材に求められる資質は自発性・主体性・創造力などが主なものとなる。これらは、コンピュータやAIが「本質的な意味で持つことが出来ない」。故に、近い将来に人が磨くべき資質であると断言できる。

 

 

 これらの資質を持つためにはどうすればよいのか?

 

 AIシステムそのものを構築することすらAIで大体できてしまう時代である。
 その中で私が辿り着き、講義などで若い人材に伝えているのは、

「リベラルアーツ(一般教養)」の重要性

 である。

 技術知識とリベラルアーツの組合せによって、同じエンジニアリングでも幅や深みが異なる。

 『そもそもこの課題は何のために解くのか』

 『この結果は社会にどう影響するのか』

といった、AIにはできない俯瞰的な視点や、問いを立てる力が養われる。

 一つの課題に対し、最短ルートで答えを得ることも重要であるが、これからの若手人材の育成においては、答えを得るまでの過程や経験といったものを意識させることが重要となってくると私は考えている。

 弊社(株式会社akf)ではCAEやAIを含むITやデジタルに関するコンサルティングが主要な事業であり、モノづくりとITを両立させることで製造業のDXを実現する。

 akfの強みは単なるITのシステムやツール導入に留まらず、

 「ツールを運用する人材の育成

 「経営・現場改善を達成するための戦略策定

を含む総合的なソリューションの提供であり、様々な協力企業とアライアンスを組むことによってこれらを実現してきた。

 「モノづくりのDX」の本質は、最新のツールを導入することではなく、それを使いこなし新たな価値を生む「人」と「組織」の変革にある。もし貴社が、「IT技術を導入したが現場に定着しない」「解析結果を評価できるエンジニアが育たない」といった『技術と人の狭間』にある課題に直面しているのであれば、ぜひ一度akfにご相談いただきたい。私たちは解析のプロフェッショナルとしての高度な技術力、現場のリアルを知る実務家としての経験、そして経営とエンジニアリングの両方の視座を併せ持つパートナーとして、貴社の未来を担う人材が自律的に技術を使いこなせるようになるまで、技術と教育の両面から伴走支援することをお約束する。

令和8年1月吉日

株式会社akf

https://ak-firm.com/

代表取締役社長 増沢航介